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WORKS

EDIT TOWN 9つの「世界の読み方」

株式会社百間は、角川武蔵野ミュージアム4階のEDIT TOWN「ブックストリート」をプロデュースしています。
図書館と美術館と博物館を融合する構想段階から関わり、
古今東西100万冊を動かす松岡正剛の編集的世界観にもとづく画期的な文脈づくりを試みました。

”動的平衡”をめざす画期的な分類をつくる

 2020年11月、株式会社百間がプロデュースした角川武蔵野ミュージアムEDIT TOWN「ブックストリート」が誕生した。半世紀によぶ「松岡正剛の編集的世界観」を複合的に編集してソフト設計の基盤をつくった。9つの世界の見方に則った画期的な文脈を骨格として、松岡正剛と百間率いる選書チームがタッグを組んで約2万7000冊を選書した。角川武蔵野ミュージアムは、私立の図書空間だからこそ実現できる実験的な「新たな文脈」だと賛同した。

 ちなみに、9割を超える公共図書館と大学図書館が採用している図書分類は「日本十進分類法」と言われる。1873年に創案したデューイ十進分類法 (DDC) の知の体系をもとに作成されたもので、その後、大量な容積を占める図書整理に圧倒的な威力を発揮した。ところが、情報化社会の発展により、ネット上で厖大なコンテンツの陳列が示す現実性と、約2000年に及ぶ書物の陳列がもってきた情報編集力の分断は加速の一途を辿っているのが現状だ。

 このままでは書籍が保ってきた「知の秩序」を、ネット任せにしてしまう可能性があると考えた松岡正剛は2つの方針をかかげた。リアルアーカイブにもデジタルアーカイブにも共通する「識別子」を束ねて革新すること、そして新たな「知のメタアーカイブ」の構想に立ち向かうこと。そうして1980年に「誰も書かなかったシナリオ」として「国家論インデックス」を発表し、2000年に電子図書館「図書街」を構想し、2009年に実験的書店「松丸本舗」でその一部をお披露目した。


 “「知」はもはや秩序を求めてはいない。多様で複雑な生態系になりつつあるだけなのである。だから、新たな図書分類もそういう“動的平衡”をめざしたほうがいい。”     ーーー千夜千冊第1605夜『インターネットはいかに知の秩序を変えるか?』

 百間は、この志とともにEDIT TOWN「ブックストリート」の可能性を世の中に伝えるため、動的平衡をめざす「新たな図書分類」ならではのデジタルとリアルの次なるあり方を模索し続けていく。

独自の書棚構成による「本の街」

 古代プトレマイオス朝の首府アレクサンドリアの中心は神殿都市であり、世界最大の図書都市だった。知と文芸を司る9人のムーサ(ミューズ)に捧げられたため「ムセイオン」(ミュージアム)と呼ばれた。当時、ミュージアムとは神殿図書館のことだったのだ。司書のカリマコスは腕にヨリをかけて「ピケナス」という世界初の図書目録をつくり、その書籍配列にもとづいて、アリスタルコスやアポロドロスといった学者たちが集って今日でいう学芸員(キュレーター)を務めた。紀元前48年、アレクサンドリアに侵攻したカエサル(シーザー)が火を放って、残念ながら焼失した。
 それから約2000年をへて、ドイツの富裕な一家のアビ・ワールブルクは長男としての財産分与を受けるかわりに「好きなだけ本が買えるようにしてほしい」と言って、以降、自分が思い描く理想的な図書館づくりに邁進した。図書館は円形で、約6万冊の本が1階「ワード」、2階「イメージ」、3階「コスモス」として相互関連する文脈のもとに配され、かつ1階の「ワード」のどの本も2階「イメージ」のアドレスや3階「コスモス」のアドレスとも対応するように工夫された。この円形図書館からはパノフスキー、ゴンブリッジ、フランセス・イエーツらが輩出した。
 その後、多くの図書館がデューイの図書分類法と十進法によって分類管理されるようになったのだが、本を出し入れするためのアドレスがグローバル化されたぶん、本が長い歴史の中で多様に分岐してきた複合性や重畳性や変異性を損なうことになった。本はもっと連想的につながっていくはずなのである。そういう観点でいえば、私にとってはアレクサンドリア図書館とワールブルク図書館こそが理想とする図書館の二つのプロトタイプなのである。
 一方、私は長らく「図書街」という構想を温めてきた。そこを人々が訪れると、次々にクスリ屋や銀行やブティックやラーメン屋に出くわすように、さまざまな本の店や本のパビリオンや本の劇場に出会えるような「本の街」(本棚でできている街)をつくりたいと思ってきたのだ。ラフな設計にとりくんでみると、200万冊から800万冊を擁するものとなり、実現しようとすると東京ドーム8個ぶんほどのものになるため、そのままコンピュータ上の仮想図書館としてお蔵入りさせている。
 このたび角川武蔵野ミュージアムの4階に設(しつら)えた「エディットタウン」(略称ET)は、以上のような私の積年の構想の一端を21世紀日本にふさわしくカジュアルに、またハイ&ローをまたいで仕立てたもので、隈研吾デザインによる本棚を自在に組み上げることによって、独特の書物構成をもつ「本の街」ふうになった。
 ブックストリートに沿って「本の街」(エディットタウン)をぶらついてもらうと、いつしか高さ8メートルに及ぶ「本棚劇場」に迷いこむようになっている。また、エレベータホール前の案内カウンターの左側には大きな「エディット&アートギャラリー」があり、年間数度の企画展が開かれ、まさにワールブルク研究所が「イメージと知」を交差させたイコノロジーを膨らませていったように、21世紀アートの斬新な編集が年々試みられていく。陣野真吾とゲストキュレーターによるディレクションだ。
 ブックストリートの途中から右のスペースに入ると、そこはちょっとした暗がりで、荒俣宏が手ぐすねひいて待っている「荒俣ワンダー秘宝館」になる。ミュージアムにはもとより近世以降は博物学の興味深い機能がそなわってきたのだが、ここでは荒俣宏が格別の「驚異」(ワンダー)をお目にかけてくれる。こうして、角川武蔵野ミュージアムの本たちは、アートやナチュラルヒストリーや変わったオブジェたちとも共存することになったのである。

松岡正剛 SEIGOW Matsuoka

「学び」と「遊び」の間にある

 「本は、世界。世界は、本」。私の師・松岡正剛は、約100万冊の本と日々交際している。1980年代に「編集工学」という方法論をつくり、古代から医療まで、サブカルから AI まで、どんなものでも縦横無尽に組み合わせるその姿は、まるで「生きる図書館」だ。ピラミッドと21Cの社会制度、浦上玉堂の筆使いと樂吉左衛門の器づくり、河井寛次郎と手の造形、唐詩選と琵琶湖、「間」の不思議、そのたびに書棚にむかってページを開きながら、どこからでも話を始め、どこまでも連れて行ってくれるのが松岡なのだ。
 こうして松岡正剛から「知と出会う方法」に刺激をうけ、本をつかって「セカイ」を編集する面白さを知り、「学び」と「遊び」の間にある知の現場に無我夢中になった。私たちはたくさんのメモリーを赤ちゃんの頃からもち、いろんなセカイに出会い、暮らしたり生きたり考えたりしている。それを「リコールする」とか、「リマインドする」ということをしているのが日常活動であり、その全てが入っているのが書物なのである。何通りもの本の出会い方が、松岡が監修する数々の実験的な図書空間プロジェクトにおいて企画制作責任者を歴任する機会に恵まれた。たくさんの才能が混じり合うように大所帯のチームを組み、対話につぐ対話を重ねながらつくり込むスタイルは、まるで「本たちの祝祭空間」をつくっているような心地になる。あるとき、こうして本と人と事と物がひとつの場で交わるプロセスこそが、松丸本舗をつくる時に松岡が掲げた「BOOK WARE(ブックウェア)」という構想そのものだったのだと気がついた。企画・選書・空間・制作・デザイン・演出・造作・運用・展開まで、決して分断することなく「BOOK WARE」を貫くことで、部分が立ち上がり、全体の輝きが増す。
 EDIT TOWN「ブックストリート」は、こうした経験と技術と人脈を総動員した。各界の名人・達人・超人から太田香保(松岡正剛事務所)をはじめとした編集工学の同志に至るさまざまな知見をいただき、さらに角川武蔵野ミュージアムのご理解とともに、いくつもの難関を超えることができた。なかでも日本十進分類法に則らない松岡正剛の編集的世界観による9つの分類は、その最たるものである。世界に誇るべき世界の見方として画期的で冒険的、官能的で構造的な試みとなった。ブックストリートの本の並びは、ソフト設計「知図」の守・破・離をとおして真髄をつかむことができたら、動かせるような仕組みになっている。そう、細胞が入れ替わるように、書籍も入れ替わるのだ。

◎「本には何でもはいる。ラーメンもバスキアも医療も」
◎「建築に設計図があるように、ソフトにも情報の設計図がある」
◎「修学院離宮の霞棚のような違い棚がいい」
◎「1冊は10冊に、10冊は100冊に、100冊は1,000冊に」
◎「コツは、利休の<おまる>だ」
◎「世界にたった一つの新しい図書空間を誕生させる」

EDIT TOWN ブックストリートについて夜な夜な話した松岡と和泉と中村の打ち合わせは、足掛け5年、延べ500回を超えた。そんな中で忘れられない印象的な言葉をここに記した。ゆくゆくエディットタウン「ブックスストリート」を歩きながら本を立ち読みするだけでなく、アプリで本を買ったり、AIと本の対話をしたり、ETで繋がった読者倶楽部で集う場になることをイメージしている。

和泉佳奈子 KANAKO Izumi

「本は、世界。世界は、本」

ブックストリートは、9つの「書域」に分かれ、書域はそれぞれ約15の「書区」(大見出し)をもち、
書区はさらに小割りの約10列の「書列」(小見出し)へとつながります。
エディットタウンの選書を構成するET1〜ET9までをご紹介します。

「動き出す、本の空間」

EDIT TOWN ブックストリートには、
動的平衡を目指す「新たな図書分類」をつくる
工夫のほかに、街歩きをする感覚で
訪れた人々の思考を揺さぶり、本の奥へと誘う、
たくさんの「仕掛け」があります。

百間の図書空間企画をあふれる才能で表現する
デザイン・アートワークの
仕掛け人たちをご紹介します。

EDIT TOWN ブックストリート



■全体監修|松岡正剛
■書棚設計|隈研吾 渡辺傑
 斧原慶子 / 隈研吾建築都市設計事務所

■企画・選書・演出監修|和泉佳奈子 中村碧 / 百間
■コンストラクションマネジメント|桂川清彦
 臼田有吾 / 久米設計

■コンテンツ制作|宮下俊 今井久
 小林弘明 小栗洋平 / 東北新社
 徳重岳浩 / オムニバス・ジャパン

■建築設計・施工|星野時彦 野島秀仁
 佐々木直也 / 鹿島建設

■内装設計・施工|綿引典子 黒田教昭
 大嶽直記 加藤勝実 / 丹青社

■クライアント|角川文化振興財団

■サインデザイン|佐伯亮介
■シンボルデザイン|松田行正 / マツダオフィス / 牛若丸出版
■ロゴデザイン|美柑和俊 / MIKAN-DESIGN
■リコメンドルーフデザイン|浅田農 川西遼平
 小森康仁 佐伯亮介 佐藤亜沙美 高畠新
 富山庄太郎 穂積晴明 町口覚 美柑和俊(あいうえお順)

■アートワーク|川西遼平 佐貫絢郁




EDIT TOWN ブックストリート|選書メンバー



■全体監修|松岡正剛
■企画統括|和泉佳奈子 / 百間
■進行統括|中村碧 / 百間
■選書統括|太田香保 / 松岡正剛事務所

ET1 記憶の森へ
■ブックディレクター|小西明子
■選書メンバー|後田彩乃 大野哲子 大原慈省 奥山和栄ほか

ET2 世界歴史文化集
■ブックディレクター|金宗代
■選書メンバー|池澤祐子 石井梨香 石黒壮明 後田彩乃
 小川景一 小川裕司 小澤英輔 門倉正美 中野由紀昌
 永渕尚子 中村まさとし 矢野敏雄 米川青馬ほか

ET3 むつかしい本たち
■ブックディレクター|広本旅人
■選書メンバー|石黒壮明 岩橋賢 大野哲子 小川玲子
 米川青馬ほか

ET4 脳と心とメディア
■ブックディレクター|田原一矢
■選書メンバー|小川玲子 川崎隆章 品川未貴 中野由紀昌
 仁科哲 松永真由美 米川青馬ほか

ET5 日本の正体
■ブックディレクター|大音美弥子 田原一矢
■選書メンバー|石黒壮明 滝沢弘康 小川玲子 竹中朗
 寺平賢司 西村俊克 宮坂千穂 米山拓矢ほか

ET6 男と女のあいだ
■ブックディレクター|大音美弥子
■選書メンバー|池澤祐子 大野哲子 小川玲子 奥山和栄
 越智環 後藤泉 鈴木郁恵 田中さつき 中野由紀昌ほか

ET7 イメージがいっぱい
■ブックディレクター|櫛田理
■選書メンバー|太田香保 大和田悠樹 小川玲子 乙部恵磨
 清塚なずな 小石祐介 小石ミキ 古賀弘幸 小島伸吾
 中澤健矢 野田努 宮坂千穂 森岡督行ほか

ET8 仕事も暮しも
■ブックディレクター|櫛田理
■選書メンバー|大野哲子 清塚なずな 高野和哉 高野真俊
 寺平賢司 西村俊克ほか

ET9 個性で勝負する
■ブックディレクター|櫛田理
■選書メンバー|小川景一 門倉正美 光澤大志 清塚なずな
 寺平賢司 飛永卓哉 中野由紀昌 新部健太郎 西村俊克
 西藤太郎 三苫麻里ほか

■システム設計協力|小坂真菜美 西惇宏

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